卒業制作優秀作品集2023
統合デザイン学科
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- 猿渡 啓太
作者によるコメント
現代の文字によるコミュニケーションには、文字の向こう側を想像する力が必要であるということが伝われば嬉しいです。
担当教員によるコメント
他者の心情を想像するというのは、誰かのためにモノや仕組みを構想するデザイナーの基本動作である。私たちデザイナーは、さまざまな物事を捉え直し、それらを形に変換し、人に示すことを繰り返すことで、徐々に心情を想像するための技術を獲得していく。
猿渡によるこの作品は、実際に手紙を書くプロセスを書かれた手紙の上に投影することで、独特な方法で心情への移入を促す体験型作品である。私たちは常に書かれた結果しかみることはできないが、そのプロセスには、都度手が止まったり書き換えたりなど、書き手の思考や想いそのものが表れる。ディスプレイに表示された映像を正面から眺めるのではなく、実際に手紙を書くように椅子に腰掛け、机に置かれた手紙と投影されたプロセスを眺めることで、想像への自然な促しがなされる設計がされている。
社会に対して表現制作者がアプローチできる一つの達成として、作品体験を通じた他者への豊かな想像力を獲得していくための手がかりを見事に提示してみせてくれたのではないかと思う。
准教授・ 菅 俊一
作品説明
あなたは手紙から何を読み取りますか。
完成された手紙からは、書き手がどこで止まったのか、迷ったのかということは読み取れません。この作品は、手紙に書き上がるまでの過程を投影することで、書き手の逡巡する想いを可視化しました。
書き手の逡巡がわかることで、目の前の文はより濃く意味を持ち始めます。
メッセージの向こう側を想像することで文字によるコミュニケーションはよりよくなるのではないでしょうか。