以前、蚊が紙の一部になっている姿を偶然見つけ、強い衝撃を受けた。 紙の生産過程で出来た「蚊の化石」のような、不思議な現象を目の当たりにしたからだ。 今回は、このような想像を超える出来事への出会いを作りたいと考えた。 100t 、100℃という圧倒的な力で、誰もが知るモノをプレスし、想像を超える出来事に出会う面白さを体感してもらいたい。

さまざまなモノをプレスするというアイデアを実現させる為の行動に力を注ぎました。
構想したアイデアを高いクオリティでかたちにするには、何トンもの力が必要不可欠です。
作品の制作に適したプレス機を扱っている企業がなかなか見つからない中、どうにか名古屋の企業にご協力頂くことが出来ました。
お借りする回数は4回と設定し、120個ほどプレスを行っています。
限られた時間を有効に活用する為、テーマを決めてモチーフを探し、プレスの結果からまた新しいテーマで探すことを繰り返していました。
潰す向きや時間で、同じモノでも全く違う形になるので、素材を調べ、プレス時間を測るなど、一つひとつ丁寧に制作を進めることを意識しています。
展示では、その中で特に魅力的な23個を並べています。

製造過程で紛れ込んだ蚊が押しつぶされてトイレットペーパーに漉き込まれているのを見て衝撃を受けたことが、インスピレーションになっている。その衝撃を作品として見る人と共有できないか、それが石川さんの問題意識であった。方向性はかなり早い段階で決まっていた。しかし、最初は万力のようなもので人の力で潰したりしたり、潰すものを違うマテリアルで作成し圧縮したり、最終的な表現に至るにはかなり苦労をしていた。そんな中で、協力してもらえる名古屋にあるプレス業者を見つけたことでブレークスルーが起きた。100t 、100°Cという圧倒的な力は、次々と見たことないカタチを生み出していった。最初に感じた感覚をぶらさずに、手法を突き詰めていったことで、オリジナリティのある作品が生まれた。

教授・永井 一史、非常勤講師・岡室 健