一定の速度で動き続ける光が、躍動のかたちを拾っていく。するとそこには得体の知れない手足が浮かび上がってくる。
スキャナーの上で手足を動かし、色水によってその輪郭を強調することで新しい身体表現を試みた。
写し出された手足の奇妙さは、私たちの体の滑らかさや熱感を助長し、また私たちの体もこの作品群を際立たせる要因となる。
美しさを見出すか、不気味さを見出すか、 分割された肉片を繋ぎ合わせるようにして観察してほしい。

奇妙さと美しさを持ち合わせたかたちの模索に最も時間をかけました。そして、この作品に至るまでの試行錯誤の中で、体の美しさを再認識することができました。
今後もあらゆる視点から私自身を見つめることを大切にしていきたいと思います。

精度高くモノを写し取る装置、それがスキャナだ。これを単に装置として捉えるか、表現の可能性の一つと捉えるか、そこから杉本さんの作品は始まっている。 世の中にスキャナと肉体を活用した作品は、もちろん今では少なくないが、人の肉体という物体の生々しさの中にある滑稽さやエロチシズムを、 赤い液体と組み合わせてスキャンすることで、類を見ない美しい作品へと昇華させた。 肉体はもちろん3Dではあるが、私たちの脳は、その現象は2Dをつなぎ合わせて立体化しているだけである。 日々変化し、動き、血を巡らせている、そんな肉体が持つ力を感じる、強い作品となった。

教授・永井 一史、非常勤講師・岡室 健