息をするのを忘れてしまいそうなくらい、
忙しない東京の中心にいても、
ぼんやりと、
揺れながら流れる景色を眺め、深呼吸できる時間を、
私は大切にしたいです。

「周」は、卓越した表現によって、観る者を惹きつけ、印象を残す作品である。
山手線でサウナを満喫するという一見すると奇想天外な提案であるが、アイデアで終わらせずに、こうすれば本当に実現できるかもしれないという気にさせるのである。
これは、実現に向けての技術的な課題をあぶりだす想像力、具体策を練りだす解決力、相手を説得する表現力が備わっているからだろう。
共感の先の、関心を引き起こすためには、イメージを明快に伝える技術が必要である。
「周」は、日常の慢性的なストレスから心身を解放するという、空間デザインでしか出来ない方法で、社会の課題解決を目指している。鉄道の車両空間のもつポテンシャルを生かし、暫しの間、振動に身を任せ、流れる車窓の風景を楽しみながら、気持ちをリセットするという新しい日常を提案している。早々に、実現してほしい。

教授・湯澤 幸子