私たちの社会は、欲望だらけの資本の世界だ。その欲望を満たすために、人々は不本意ながら生産活動に身を投じ、お金のために働く。時には、自分がなぜ働いているのか、何を求め、何が本当に大切なのか、人生の「大事なこと」を忘れてしまう。
この空想空間は、私が現在制作しているインディーゲーム「Un-daily Magic Shop」をベースにデザインした。ゲームの世界観では、現実から逃れるために、人々は不思議な魔法のアイテムや呪文を求めて、主人公のマジックショップを訪れる。主人公は、仕事と月曜日が大嫌い。そんな彼女は、「自分が何のために生きているのか？」この在る筈もない答えを探し求めのが諦めた。ある日、彼女は仕事中に契約された「労働」という悪魔から逃げようとして、不思議な白昼夢の世界に落ちてしまった。

「ぶっ飛んだ表現と、バランスの取れた倫理観」
ZHU Yiwenは、生まれ育った国で、自分自身とは？というシビアでリアルな現実を歩んできて、仮想現実というゲームを作り上げた。ゲームという非現実の中でさえ、様々な倫理観が存在する事も、彼女の制作における動機となっている事がよく分かる。そもそも、何かを断定する事さえも必要としない。必要な事は、リズムとビートと3Dのゴーグルを通して見えてくる、360°に広がるデザインの可能性であり、それを純粋に楽しめば良い、という割り切ったエンターテインメントである。しかし、楽しむという事の先には、楽しめるか？楽しめないか？の決定をプレーヤー自身が決めないとその先にはいけない。という事に帰結し、そここそが彼女の強い問いかけである。

准教授・平野 篤史