落ち込んだ時やイライラした時、自分の気分をシートに記入し気分別の対処法へ導くキット。5人に1人が生涯で何らかの精神疾患を抱えると言われているが、学校では心の健康について学ぶ機会がない。メンタルヘルス教育が広まっていない日本で、こどもが身構えずに自分の心に対して理解を深めるきっかけを作ることをねらいとした。対象年齢は10～15歳、スクールカウンセラーによる講習後、家など好きな所で繰り返し使えるようデザイン。世界の精神衛生教育の事情等も調査し冊子にまとめた。

誰にとっても大切な心の健康について学ぶメンタルヘルス教育が滞っている日本。増田琴瀬は、子供たちが自分の心の健康の理解を深め、セルフケアできる「こころの救急箱　calmind」を提案した。デリケートなテーマだからこそ、手にとりやすい可愛さ、包み込むような安心感を持たせた表情のキットは、ビジュアルコミュニケーションを支えるイラストレーションと色彩計画、インフォグラフィック等の緻密で的確なグラフィックワーク、裏付けとなる知見とデータ、そして増田の強い問題意識から成り立っている。世界のメンタルヘルス教育事情についてのアンケート、専門家へのヒアリングをまとめた調査レポート集冊子も秀逸である。積極的かつ丹念な仕事を続けてきた増田の4年間を高く評価している。

教授・小泉 雅子