豆のように小さくて、ふと忘れられてしまいそうな、ささやかな思い出や記憶こそが、今の私を作ってくれているのだろう。

「柔らかで、強い覚悟」
中山莉花は自分の中の動機というものに素直であり、作品からは優しさが溢れているが、意思が強い。それは、彼女と初めて会った大学2年生の頃から一貫しており、彼女の眼差しは常に、日常の些細な人の気持ちや状況を見つめ続けてきた。これだけ情報が溢れ、流行りや世の中の出来事に一喜一憂する現代の日常の中で、彼女が見つめ続けている視点はどこまでも柔らかく、自然体である。その絵を眺めていると、時代という物が前後左右、解き放たれて、安らかな気持ちになってくる。そら豆を一つ一つ作り、そこに、小さなイラストを積み重ねてきた彼女の視点は、優しそうに見えて、鋭い感覚が裏付けされており、時代に媚びないとても強い覚悟に、その作品を見る者としては深い感動をおぼえる。

准教授・平野 篤史