国はなぜ争うのだろう。
偶然ここに生まれた私と、偶然そこに生まれた戦禍の人々。
その差はいつどこで生まれたというのか。
偶然、なんて言葉で片付けるにはあまりにも残酷だ。
世界中の人々は、今を生きている。

仕事をやり切るという制作者の責任や、作品の完成度への評価が、昨今、軽んじられているように思えてならない。森岡日菜子はこの風潮に挑戦することを選択する。時間を費やし、のめり込むことによって展開出来るクオリティへのアプローチを、である。
世界に現存する197の国と3つの地域全てをキャラクター化させた卒業制作だ。執拗なリサーチから得たその国独自の意味あるフォルムと色を組み合わせ、キュートなタレント達に仕立てあげる。見る側を惹きつける魅力的なクリエーションにまで昇華させた。見事だと思う。
ポリシーを貫く気概、タイムリーな感性、明快な造形力、そして、笑顔を絶やさない人間性。森岡にはコミュニケーターとしての才能がたくさん揃っている。

教授・澤田 泰廣