窪倉は生と死をテーマに、銅版画で作品を作り続けてきた。その作品の中には、必ず可愛らしい少女が描かれる。しかし、それは人のようで、人でないもの。彼女の中で人外という位置づけで存在する。これらは彼女にとって、死を現すメタファーなのだろう。この作品は、「生と死に境界線はなく、影や水面のようニ虚ろに揺らいでイる」という彼女の言葉がそのまま具現化されたような世界感となった。描かれている人外達は入水するかのようにひっそりと闇の世界へ帰っていくようにも見え、見る側にその先の物語をイメージさせる。作家がこころの中に有した豊饒なイメージは、銅版画の丁寧な仕事によって、的確にこの世界に見せてくれている。

准教授・大矢 雅章