ポートレートに付随する作品を多く手がけ、己と対象者の関係性を深く掘り下げるように版を制作し、自己のアイデンティーとは何かを模索し表現しようとしているように見えます。彼女の祖父母を描いたこの作品は2人の人間性までもが伝わってくるようで、印象強く目を引く作品でした。ニヒルな革ジャンのお爺様とヒョウ柄衣装で堂々とポーズをとるお祖母様、なんてカッコイイんでしょう!!!この作品は、リトグラフだけでなく木版も併用されています。下地には、水性木版の黄色顔料で発色のよい画面を、また人物の黒のラインは木版で力強く彫り込むことで、写実的になりすぎずにキャラクターの個性を強調しています。そしてリトグラフでは色を分解し、その差し色が人物の膨らみをもたせ、それぞれの技法の持つ特徴を活用し制作しています。太田さんの拘りの詰まった代表作です。

教授・佐竹 邦子