まったく、ニヤニヤが止まらない、菜々栄さんの絵だ。戸惑いとか憧れとかが入り混じって表情が作れず困った私の顔はきっと傍目に幸福そうに見えるだろう。夜な夜なベッドサイドで 描き溜められたドローイング、寝室を満たしたナルシシズムな精神は「野原に寝そべる子」のようにピュアで貪欲。物語を綴るように次々と描かれた新作が、《Narcissus place 》と題して一室にインスタレーションされた。赤いカーペットに反射して仄かに照らされたペィンテング作品は、一点一点が驚くほど気高い。鮮やかな色彩と掻き立てられるような腕の跡、野心に満ちた構図は、プリミティブにデコレーションされたフレームまでも魅惑的な物質へと置き換えた。退屈が大嫌いな「野原の子」が筆と絵の具を味方に付けたね、おめでとう。

教授・村瀬 恭子