平田はアトリエを縦横無尽かつ精力的に使った学生の一人と言ってよいだろう。ただ２年生までは不安定な表情をその横顔ににじませていた。彼は多浪経験者で芸大受験を断ち切れないでいたのだ。私も同じ経験があるのでその心情は理解できる。しかしその後、一部屋をシルクスクリーンの工房に仕立て、精力的な創作活動に入る。それ以来、平田は実験を繰り返す作家の顔になった。そして卒業制作は4,7ｍ×6,4ｍの巨大な作品であった。ベラスケス、バーネットニューマンをオマージュしながら、平田のプライベートライフを混然とさせた大作は高い評価を得た。平田の入学時、私は合格作品にコメントを書いた。そして卒業制作の優秀作品として再びコメントを書くことになった。何か不思議なシンパシーを感じる。がんばれ平田。

教授・室越 健美