有馬 尚史
原因
技法・素材:水性油性木版 寸法:H60×W290cm
私は、ペットの亀が脱走し車に轢かれた話を元に4点の制作をした。この「原因」は亀が水槽を逃げだす部分を描いている。モチーフは右から空の水槽・犬・水槽の水位・夜の草原。空の水槽は逃げ出した後を示す。犬は逃げ出す亀を示す。ここで犬を用いた理由は脱走を視覚的に見せるのに都合の良いモチーフであったからだ。水槽の水位は逃げ出した原因で、水槽の水位のせいで亀を脱走させてしまった。夜の草原は亀の気配を野生の回帰を示している。全体を通して脱走を示した。
担当教員によるコメント
あらゆる情報が絶えずネットワークとなり溢れる昨今、急速に変化していく現代社会の中で、言葉や画像などさまざまなメディアは個人や社会の過去を記録し保存していくが、記憶にはその量が膨大なるがゆえに曖昧さを持って積み重なっていく。そんな記憶のもたらす不明瞭な映像を有馬尚史は、木版というオーソドックスな技法で表現している。「ペットの亀が脱走して、車に轢かれた」というひとつの事件なのだが、フィルムのコマのごとく作品四点を繋げてその「原因」を露わにしている。もともと映像でも作品を制作している作者だが、彫りの手仕事を施し、刻印とも言える在外的な版を介入させることで、そこに確かな記憶を残したいと考えたのではないだろうか。そして、その手の痕跡が観る人の記憶と重なってゆくのだろう。
教授・古谷 博子
担当教員によるコメント
あらゆる情報が絶えずネットワークとなり溢れる昨今、急速に変化していく現代社会の中で、言葉や画像などさまざまなメディアは個人や社会の過去を記録し保存していくが、記憶にはその量が膨大なるがゆえに曖昧さを持って積み重なっていく。そんな記憶のもたらす不明瞭な映像を有馬尚史は、木版というオーソドックスな技法で表現している。「ペットの亀が脱走して、車に轢かれた」というひとつの事件なのだが、フィルムのコマのごとく作品四点を繋げてその「原因」を露わにしている。もともと映像でも作品を制作している作者だが、彫りの手仕事を施し、刻印とも言える在外的な版を介入させることで、そこに確かな記憶を残したいと考えたのではないだろうか。そして、その手の痕跡が観る人の記憶と重なってゆくのだろう。
教授・古谷 博子