二反田彩は、個人的な思い出や心惹かれた出来事などをもとに、軽やかでありながら非常に手の込んだ、色彩豊かな作品を制作する。幼稚園の頃の記憶をテーマにしたスモックの作品では、オシロイバナを採取し、花びらで生地を染めるところから始める。スモックの形もひとつひとつ異なり、安易な型紙は使用しない。実物大の鳥のレリーフ作品も、使用する羽根や刺繍糸はそれぞれ手染めである。もっと簡便に作る方法もありそうだが、二反田は自らの制作過程に関しては頑固であり、妥協はしない。だがこの費やされた時間こそが、二反田作品の強さである。モチーフが持つ可愛らしく幼児的なイメージを超えて、二反田が作品と丁寧に向き合い、想いを込めた時間が、そこに確かな深みと美しさを与えて観る者の心に響く。

教授・吉澤 美香