熊倉の描き出す画像は、熊のぬいぐるみであったり星やハートの記号だったりする。いわゆるかわいいキャラクターたちだ。しかしそんな外見にだまされてはいけない。よく見ればキャラクターたちの仕草が変なのだ。カワイイ熊たちは春画のポーズをとっているのだ。そのポーズに気づいた瞬間、作品への見解が一気に変わってしまう。かわいいと思っていたものがコペルニクス的転回を見せて異様なものとして迫ってくる。「カワイイ」には幼児性が含まれているが、誰もが幼児のまま年を重ねることは出来ない。熊倉は日本にはびこる「カワイイ」という価値観に小石を投げ入れる。カワイイの正体は何なのか。カワイイの行き着く先にはどんな結末が待っているのか。その波紋の広がりが楽しみである。

教授・菊地 武彦