3年の中頃からだったか、アトリエでガンガン、画布に向かう小林君の姿をよく見かけるようになった。それまではどちらかというと映像や音楽への興味がそのまま作品につながっていくイメージの方が強かったが、この油絵への集中はそこから途切れることなく卒業制作へと持続された。色彩をモノクロームに限定し、画面いっぱいにクローズアップされた自分の顔。見る者を真正面から凝視する「Portrait」と、口を少し開き伏し目がちな「Portrait : Kobayashi｣｡この二作の対照的な表情、この表情の描写をひたすら追い求める画面での葛藤、画面に抵抗するように重ねられた絵具の痕跡、せめぎあい。この純粋な探究が描写の可能性を大きく拡げ、画面上には圧倒的な絵画空間が生まれることになった。

教授・日高 理恵子