作品のキャプションには〈砂糖、小麦粉、バター、卵…〉といった素材名が付されている。それもそのはず、作品はクッキーとアイシングで出来ている。だが表現されたものは寿司、すき焼き、盆栽、ひな人形など和のテイストばかりで、見る者の笑いを誘う。以前、彼女は遊ぶ子供の群像や着せ替え人形を描いた。また布でミニチュアの洋服を作った。このように女性的、家庭的、日常的なモチーフを扱い、自然体で独自の表現を展開してきた。そしてクッキーに出会った。クッキーをアートの世界に引きずり込んだ。しかもインスタレーションという形式で。アイシングによる彩色は立体感がありリアルで、質感さえ感じさせる。アートと日常を上手に繋ぐこれらの作品が、今後新しい一分野を成してくれる事を願っている。

教授・野田 裕示