卒業制作優秀作品集2023
絵画学科版画専攻

鈴木 遼弥

Curving Photo #10

技法・素材:貼り込み転写、彫刻
サイズ:H1125×W2000mm

作者によるコメント

写真イメージ自体に彫りを加えることで、視覚的イメージと体感的な凹凸の相互作用による認識の曖昧化を探求した作品。私にとって、写真イメージとは「質量のある観測不可能な膜状の物質」であると考えている。そのため、写る図像の奥行きや色、質感はある種、実体がありながらも二次元の中の虚構な存在であり、印画紙やロール紙などによってその図像は物質になっていると考えている。本作品は、貼り込み転写を幾重にも行うことで写真イメージのみが積層される。さらにここに彫りを加えることでイメージは物質性を持つ。これにより、二次元の中の虚構的な実体と物質的な凹凸を衝突させ、認識の曖昧化を表現している。

担当教員によるコメント

版画表現は、材料、道具、技法等によるプロセスの習得と強く結びついているが、鈴木遼弥さんは、その版画制作の枠組みに囚われることに疑問を呈し、自身の木版画工程を一旦解体し、再構築することから卒業制作をスタートした。まず、下絵となる写真イメージを和紙に出力し、パネルに何十枚も張り込こむ。1枚1枚は、薄い和紙だが、重なることで素材の質感を失い硬質な物へと変換される。そして、積層されたイメージを彫刻刀で彫ることで表面に凹凸が生まれ、張り込んだパネル、和紙等、さまざまなレイヤーの出現に繋がった。新たな版画のプロセスから生み出された作品は、イメージと物質を往還させながら、視線のありように変化を与え、視覚的な揺らぎと複層的な構造をもった表現となっている。今後の展開にも大いに期待したい。

教授・古谷 博子

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