岸千裕は、可愛らしさと、静かなる情熱を常に作品に込めている。この作品は、窓という外と内を繋ぐ装置を基軸に、細かく描かれた線が暖かく、立体で作られた窓を隔てているが、どちらの世界も平和で優しい気持ちの住人が生きている。勿論、この世界は架空の世界であり、描かれている生き物は、人間ではなく動物である。にも関わらず、感情を重ねて見てしまうのは、全てのキャラクターに細かな設定をしているからだと思う。それは、世界観を構築するディレクションを自身に課して、妥協する事なく制作を実行した結果だと思う。窓のフレームの質感もフラットではなく、微妙な凹凸がある事もこの世界において、無機質な物よりも、手触りを重視した物を好む。という彼女の拘りが垣間見れると思う。

准教授・平野 篤史