卒業制作優秀作品集2021
統合デザイン学科

廣田 結萌果

おとの鑑賞
三重奏「カノン」を視覚化した映像作品

技法・素材:Illustrator、After Effects、プロジェクター/音源=パッフェルベル 『カノン』(ヴァイオリン演奏)
サイズ:H1030×W728mm(1点)、H515×W728mm(1点)、H300×W300mm(3点)

複数のパートが同じ旋律を追唱することで音楽が構成されるカノン。音が繰り返される構造を視覚的に表したらどのようになるのだろうという好奇心がこの作品を制作するきっかけでした。楽譜という点の情報を音楽に合わせて幾何学的なグラフィックや立体で表現することで、旋律の仕組みや構造を見る面白さを伝えたいと思い制作しました。

担当教員によるコメント

廣田の卒制は試行錯誤の連続だった。網点が重なるときのモアレ(網荒)という現象に興味があったという美大生らしい時代を経て、突然の「音楽の可視化」への変更。もう秋だったか、かなり遅い決断だった。過去の卒制でも音楽の可視化はいくつか覚えているが、なかなか定着が難しい。音楽そのもののほうが強く、ビジュアルが邪魔になってしまうか、ジャケットのアートワークに落ち着く(それが悪いわけではない)。しかしそれを廣田に言っても全く聞く耳をもたない。そういう頑なで一度決めたらやり抜く強い人だ。おそらく明解な完成のビジョンが見えていたんだろうとおもう。最近までバイオリンを弾いていたというキャリアがあることで音楽を血肉化しビジュアルとして動きをもった唯一無二なものにできるのではないだろうかと期待した。それから廣田のデザインの旅がはじまった。音とモーショングラフィックの同期は技術的にかなり試行錯誤があったのではないだろうか。それから数ヶ月後、レビューで仕上げてきた作品をみた時は一同、目を丸くした。大小いくつかのクラシカルなフレームの中に投影された音と完璧に同期したモーショングラフィックの完成度!グラフィックもシンプルで強く、美しい。でももっと良くなる方法がありそうだ。卒制のプレゼンテーションで廣田に実際バイオリンで「カノン」を弾いてもらったのだが(実際相当上手かった)弾いている弓をもつ手の動きとモーショングラフィックのシンクロが素晴らしく、まさに音楽の可視化、深澤直人教授が評価するように「説明がいらない作品」になった。「カノン」が持つ構築的なコード進行が見事に表現されていたし、まさに音楽の可視化が成功した瞬間だったと思う。モーショングラフィックも構造的で美しく、建築図面のようなものになった。廣田のバックグラウンドを聞いてなるほどと納得した。感覚的なものより、楽譜のような図面的、設計図的なものに興味があるとのこと。卒業して音楽に関係するデザインに携わっていくとのことだが軽やかでリズミカルに音楽の魅力が伝わるようなデザインしていって欲しい。楽しみにしています。TOP21、あらためておめでとう。

教授・佐野 研二郎、非常勤講師・小杉 幸一、非常勤講師・榮 良太

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