３つの同じカタチの造形物は、どれも全く異なる展開図からつくりあげられている。展開図が違うことで、３次元にしていくまでの縫う過程や糸の力の入れ方は３種類どれも異なり、完成までのプロセスに大きな違いが生まれる。
手縫いでひとつひとつ時間をかけて表層をたどることで生まれるカタチの暖かみや寄り添いやすさ、手のエネルギーを感じてほしい。

縁があって大森さんの指導担当となった。最初に本人の話しをうかがうと、まるでバーでゆっくりグラスを傾けながら私へ語りかけるような印象だった。彼がいるスタジオ１の雰囲気はよく、実は大森さんの存在も影響しているようだった。グラスの氷が溶けるのを待つようにゆっくりジワジワーっと話す本人の説明を、私だけでなく、教室にいる同級生が耳を立てて聞いていて、各々からの反応が読み取れる。大森さんは卒制の作業で忙しいクラスメイトを和ませる力があるようだった。パターンを効率よく使用して作り上げた立体造形は、なんどもつくり直してできあがった素敵な作品だった。私には、まるで北欧のバーにムーミンが座っているような印象を持った。

教授・藤原 大