様々な変化が起こったこの数年、すべてのことが一瞬で思い出になることに気づかせてくれました。

そして、今現在ここで起きていることも過去になりつつ、遠く流れていきます。最後は、私の心の底に沈澱し思い出の満ちた器になって、ささやかな光を放っています。

水の流れに運ばれて少しずつ形が変化する石ように時間の経過は日常の景色を変えてゆく。オウさんの卒業制作は一見陶器のように思える１７体の作品であるが実は、刺繍、編み、転写によって加工された生地の断片が手の中で組み合わされてできたテキスタイル作品である。ひとつひとつの作品はそれを制作するオウさんの手の意思が形を決定していくもので、下絵を再現するような予定された結果を示しているものではない。また、同質のイメージを持ちささやかな光を放つ１７の塊が自作の展示台の上に配置されるとそれぞれが共鳴し合い、心地よい調和が生まれてくる。目まぐるしく過ぎ去る時間の中にあってゆっくりと変化する１７の時の器が観るものに眼福を与え、その心を楽しませてくれている。

教授・柏木 弘