卒業制作優秀作品集2023
芸術学科

増井 学

李禹煥の絵画
—意志からケアへ、全体から部分へ—

作者によるコメント

本論文では李禹煥の絵画作品を軸に、ポストもの派と呼ばれる作家たちが到達した表現の真髄に迫ろうと試みた。その際、ジャクソン・ポロックやアグネス・マーチンといったアメリカの現代美術作家たちとの比較、さらに八大山人や小田野直武といった日本、東アジア圏の作家たちとの比較を行うことで、横軸と縦軸の両視座を取り入れ、そこから「ケア」と「部分」というキーワードを発見した。それは「意志」の後退という、彼らが成し遂げた近代美術の超克に他ならなかった。

担当教員によるコメント

李禹煥(1936-)は1960年代末から1970年代はじめの「もの派」の中心人物であるが、増井さんはその後の李の絵画の仕事に着目する。そして、李は通常の「意志」ではなく「ケア」と呼ぶべき非意志的な接し方によって作品を制作していること、またそこにおいては、部分部分が全体を形成していくというよりは「部分」が即「全体」として存在するような描き方をしていることを、増井さんは独自に論じている。増井さんのそのような研究は、ポストもの派、さらには日本現代美術を再考する上での一つの興味深い切り口を提示してもいる。

准教授・大島 徹也

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