卒業制作優秀作品集2023
芸術学科
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尾崎世界観が表現する既存概念の破壊と構築
―肯定されてこなかったものの肯定―
担当教員によるコメント
後藤紗絵さんの『尾崎世界観が表現する既存概念の破壊と構築―肯定されてこなかったものの肯定―』は、小説を書きはじめたばかりのいまだ未知なる作家、尾崎世界観の表現世界のもつ特色を果敢に、またきわめて繊細に考察した論考である。尾崎はロックバンド「クリープハイプ」のボーカルとギターもつとめており、その楽曲の大半を作詞・作曲している。歌詞と小説に共通しているもの、歌詞でしか表現できないもの、小説でしか表現できないものとその表現のすべてを分析し、そこに社会の制度にして文学の制度に根底から抗う表現の可能性を見出そうとしている。反復や言葉遊び、さらには「暴力」についても反対意見を充分に検討した上で積極的に評価している。文学研究として大変優れている。
教授・安藤 礼二
作者によるコメント
尾崎世界観とは、ロックバンド「クリープハイプ」のボーカルギターを務めるバンドマンで、小説家としても活動している。尾崎世界観の表現がなぜ魅力的なのか、表現の核とは何かを考察する。歌詞と小説の分析からは、どちらも既存概念を破壊し、表現をもって再構築することで、肯定されてこなかったものを肯定しているということが分かった。そこから小説では、花村萬月や町田康から影響を受けながら、小説にしかできない「新しい言葉」を生んでいる。