いま、容易には解決できない数々の難題が人類にふりかかるが、我々はこの星で生きていくしかない。2020年、作者はそのことに思い至り、「地球にいきている」ということをグラフィックデザインの表現方法でいくつかの角度から切り取った作品群をインスタレーションとして提示した。大きな地球のポスターの前に鑑賞者が立つと、その姿がモニターに映る。地球を単純な図形で様々に表現した冊子や、初期テレビゲームのような素朴な動きが郷愁を誘うアニメーション、さらには言葉のモビールもある。個人レベルでの実感をそのまま作品化するのではなく、そこから普遍性に辿り着こうとした結果がここにある。デザインには、まずは問いを設定し直す力が必要なんだ、見ていてそんなことも考えさせられる。

教授・服部 一成