糸を編むという技法はシンプルながらも流動性を帯びた表現であり、編まれた素材は伸縮性のないものでも、その構造によってストレッチ性を持つ。犬竹結花さんは、色と素材を自在にコントロールしながらも、その特性に従って作品を作り出している。そして、重力に逆らうかのように空間にそびえ立つこの立体作品は、全て彼女自身の手によって編み上げられている。1本の連続した糸から成る多様なカタチ・模様によって形成された構造は、見る角度によって様々な表情を見せ、空気を孕んで浮遊している。素材に触れ続け、手で考えながら創造した道のりを経たことによって、まるで目の前で生成しているような不思議な存在感を放つ力強い作品となった。

講師・山田 菜々子