私たちの脳内イメージは複雑だ。錯綜した多様体のようでもあり、深い何層もの記憶のレイヤーに包まれてもいるようにも思える。この捉えどころのない多様多層なイメージを、映像作品として作りあげる上で、まず必要なのは、例えば画面の「強度」であり、各カット、各シーンはこうあらねばならないという作者の「強靭な意思の力」が必要だ。この作品は各シーンが、強烈なイメージのインパクトを持ち、その高いテンションの連なりが続く、次にどんなカットが来るか全く予想がつかない。星雲のイメージにはじまり、金星にロケットが潜りこみ、かろうじて共通する金のイメージと、それに魅了される子供や、マスクを被った男達などだ。一貫した美意識にコントロールされた世界観を創造した手腕は見事である。また、美しい世界に人は騙されているので「全てを疑う」という気持ちを鑑賞者に芽生えさせたいのが作者の意図だ。この解釈可能性が限りなく開かれている作品に対して、たくさんの方々に反応する気持ちが湧き上がってくることが作者の狙いだろう。 村島葉寿輝くんの新作が発表される度に世界が注目するようなアーティストとして飛躍することを期待する。

特任教授・寺井 弘典