小林未央子さんは空間に絵画を描くように作品を浮かび上がらせる。以前、青空に切れ目が在るかのように雲が湧き出て来るのをぼんやり眺めていたことがある。その情景を思い出す。誰もいない実習室で、毎日涼し気な眼差しで何処か遠くを見つめているように、淡々と制作をしている小林さんの姿は、物に依り右往左往している者には眩しく映った。ジュエリー企業への就職が決まっていた小林さんは最後の講評会で、卒業したら作品が作れなくなると言葉を詰まらせた。小林、そんなことはありません大丈夫です。あなたが生む自由でのびやかな作品はあなたの創造への頑固な意力がもたらしているのです。これからが本番です。

教授・村井 進吾