視界を覆う幅4メートルの大画面が観るものに迫り来る。絵になる場所を過不足なく切り取った大胆な構図は、その一方で細部に至るまでリズミカルな筆遣いで描く事を忘れてはいない。滝本体の激しく落下する水流も、垂直方向の伸びやかなストロークで心地よく決定づけている。同時に色調は明快な色面の集積に置き換え、その結果、御滝を取り巻く清浄な空気感をより一層印象づけることに成功している。こうした表現上の強調と省略を通し、現場の臨場感が損なわれる事無く観る者が感じ、共鳴できるのも、作者の作画に対する想いが勝っているからに他ならない。卒業制作にふさわしい、秀作である。

教授・武田 州左