使い道のない「使えるもんなら使ってみろ！」という松本圭太のフリー素材サイトは、通常デザインには目的があるということへの反発から発想されているあたりが素晴らしい。そして、映画からインスパイアされたという作者のヴィジュアルの切り取り方のセンスも図抜けている。一見、簡単に描かれたイラストレーションは大きく拡大しても十分な完成度を持ち、アートの領域に足をかけているようにすら見える。さらに注目すべきは、それぞれの題名のリスト表だ。「逃げる泥棒」、「燃える車いす」‥‥。あまりの意味のなさにうれしくなってくる。ぜひ、質、量ともに充実した彼の全ヴィジュアルを見てほしい。

教授・大貫 卓也