夢を見る空間としてのマットレス、それを包み込む敷布はテキスタイルプロダクトではあるが、鈴木瑠衣がめざしたのは良い夢を見ることができる素敵な寝具のデザインではなかった。主にシルクスクリーンによる捺染技法を用いているものの、既成のやり方からは外れて、まるで画家がキャンバスに向かうがごとく床に広げた布と対峙して制作は進められた。その結果、テキスタイルデザインの分野の枠を乗り越えた独自の絵画的表現力を持つ優れた作品ができあがった。４年間テキスタイルデザインを学んだ彼女の眼差しは常にもっと遠くにあるものに向けられていたようだ。現実を受け入れながらもそれから脱しようとする時に生まれる葛藤が原動力となって未だ見ぬものをつくりあげたのであろう。

教授・柏木 弘