佐藤さんは卒業制作作品集のコメントで「馬へのまなざし」と題し、幼い頃からの馬との関係を書いています。今回の作品群は、馬の日常とその周辺を単なるモチーフとして捉えたのではなく、デザインを試行錯誤しながら彼女のこれまでの人生の大半を占めていた乗馬の日々を反芻している趣もありました。しかし制作途中は紆余曲折、色彩に対する悩みが過敏になりスランプを迎えた時期もありました。それでも最後までプリントデザインとその生地を使用した馬着の制作を中断することなく毎回授業に出席し、彼女が本来持っている色彩感覚である深く力強い色彩群を駆使して制作し続けました。常日頃は寡黙にみえる佐藤さんですが、このデザイン群は彼女の思い出の日々を饒舌に語っていると思います。

教授・高橋 正