三瓶さんの絵画への挑戦。特に学部3年の頃からのこの取り組みは、淡々と静かに、そして確実にこの2年間で深化し続けてきた。3年の頃はどちらかと言うと画面全体にタッチが拡がり〈描かれた部分〉と〈地〉がせめぎあうことから緊張感ある絵画空間が生まれていた。そこから徐々に画面を構成する要素が削ぎ落とされ、〈地〉にあたる部分が画面の中で広範囲にわたり、モチーフとその周辺で起こるぎりぎりのせめぎあいに焦点が絞られてきた。この限られた要素からいかに絵画としての〈ゆたかさ〉に近づいていけるか、というこの困難な絵画への挑戦に果敢に挑んだのが、まさに三瓶さんの卒業制作であった。そしてこの作品の強度は確実に三瓶さん自身の強さともなっていった。

教授・日高 理恵子