ジャスパー・モリソンが夕日で伸びた物の影からテーブルの脚をデザインしたという話がある。アイディア獲得の瞬間とはこうしたものかも知れない。普段見慣れた事象の中に何かを発見するという事なのだ。「HUG KUMU」の最初のアイディアも家族と子供達という普段の生活の中から自然に生まれたものの様に思えた。子供の行動様式をみつめ基本デザインを決めながらも、その予想を裏切る動きによく対応しディティールを決めて行った。何度も原寸模型を作り、子供の「手」になって感覚的な部分にも配慮していた。子供用であっても可愛さに媚びることなく、安定感があり清潔感がある本当の意味でスタンダードの良さが有るものに仕上がっている。

教授・富樫 克彦