卒業制作優秀作品集2023
演劇舞踊デザイン学科

共同(キャスト・スタッフ)
卒業制作 演劇公演

『メビウスの輪〜縁の交わり〜』

『解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話』『エッグ』2作品連続上演
上演時間:190分(各作品90分 途中休憩10分)
期間:2022年12月25日(日)〜26日(月) 全2回公演
会場:東京芸術劇場シアターイースト

『解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話』
作:オノマ リコ
脚色・演出:蔭山 あんな
出演:荒木 香乃/石田 陸/内川 大輝/大森 菜生/小山田 匠/片寄 梨亜/上瀬 もも/川口 時生/JIANG Xiaoqian/黒木 真衣/佐々木 夢/佐藤 桃彩/田坂 歩/中嶋 千歩/仁科 穂乃花/原 裕穂/望月 さあや
演出助手:田坂 歩/仁科 穂乃花
衣裳プランナー:小宅 瑞樹/渡邉 佳菜
照明プランナー:WANG Yanni
音楽:原島 美怜
演奏:蔭山 あんな/原島 美怜/大橋 咲来

『エッグ 』
原作:野田 秀樹
脚色・演出:旦 妃奈乃
出演:青木 樹/井澤 佳奈/太田 華子/奥山 樹生/越石 裕貴/済木 心媛/佐藤 里帆/椎名 陸斗/島田 和哉/下田 あい/鈴木 彩愛/田中 伶奈/平岡 美理/福嶋 まりあ/本田 実子/水落 燈李/虫鹿 優也
演出助手:水落 燈李
振付:島田 和哉
編曲・演奏:井澤 佳奈
効果音:奥山 樹生
録音:青木 樹/片寄 梨亜
衣裳プランナー:馬込 凜
照明プランナー:LI Zheng
舞台美術プランナー:金子 梓美
舞台美術:青木 美久/重留 野々花/CHI Yizhou/永井 茜/難波 仁美/金子 梓美/小﨑 千歳/鈴木 塔子/蓮沼 有彩/八木 瞬羽
衣裳:LEE Jiwon/小宅 瑞樹/野﨑 郁稀/馬込 凜/渡邉 佳菜/島田 真美
照明:WANG Yanni/片岡 菜々美/佐野 杏奈/後藤 円佳/LI Zheng
舞台監督:蓮沼 有彩/八木 瞬羽
音響:鈴木 はじめ/若林 なつみ
プロジェクトリーダー:佐々木 瑠海
制作:LEE Jiwon/木島 史人/佐々木 夢/重留 野々花/野﨑 郁稀/平岡 美理
宣伝美術:日俣 千樹
リード文:太田 華子
広報写真:中嶋 千歩

監修:柴 幸男

アドヴァイザー
上演:大石 将弘/岸井 大輔/野上 絹代
舞台美術:金井 勇一郎
大道具製作:阿部 宗徳/岡田 透
衣裳:加納 豊美/石橋 舞/三浦 洋子
照明:成瀬 一裕/藤巻 聰/大平 智己/鈴木 聖人
宣伝美術:則武 弥
舞台監督:佐藤 恵
制作:加納 豊美/坂本 もも
授業担当副手:青木 哲

作者によるコメント

今回の卒業制作演劇公演は既成戯曲の2本立てという今までにない上演形態となりました。
メンバーの異なる2つのグループの連携を常に取るために、私が担ったプロジェクトリーダーという新しい役職の設置や、制作部で考えたワークショップを行う取り組みを重ね、2つの作品を上演することが1つのカンパニーであるという連帯意識を重要視して進めてゆきました。
コロナの影響が強く残る中での公演でしたが、カンパニーメンバー全員の体調管理や、稽古場での感染対策などを細かく行う事で最終的には誰一人欠けることなく全公演を行う事ができ、更にシアターイーストを両日満席で埋める事が出来ました。この公演に関わって下さった全ての皆さんのお陰で無事に卒業公演として終わることができたと思います。

佐々木 瑠海(プロジェクトリーダー)


舞台芸術を追究した3年間の経験を糧に、最後の1年間で、様々なゼミの学生が集まり1つの公演を成立させる、という卒業制作演劇公演に取り組みました。参加した61人は、経験も嗜好も思っていることもそれぞれでした。しかし、誰かの一人称ではなく、多様な人が集まって1つの作品を作り上げる集団創作に、私は可能性を感じています。大学という場所に偶然集まった61人が手を取り合って、2作品すらも繋がって、1つの公演ができました。稽古と話し合いを積み上げたこの卒業制作は、分断が可視化されがちな世界で「みんなで1つのものを作る」ことが如何ほど希望のある行為であるかを改めて噛み締める時間でもありました。それこそがこれまでの学びの集大成であり、これからを照らしてくれる経験でもあると信じています。

旦 妃奈乃(『エッグ』脚色・演出)


4年間過ごしたこの場所は、私にとってサラダボウルみたいな場所でした。
髪色の派手なやつ、一日中ジャージのやつ、授業なかなか来ないやつ、連絡しないやつ、ずっと踊ってるやつ。自分と違う人間がこんなにもいて気苦労は絶えなかったけれど、そんなやつらが集まって何かが起こるこの環境が結局は好きで、それがそのまま上演作品となりました。
『解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話』では個人に焦点を当て、稽古場ではとにかくたくさん話をしました。自分たちのルーツから、これからの未来の話。自分たちのルーツを辿ると先人の努力に辿り着きます。では、今の私たちは何をするのか。
大学生活で多く取り組んだ集団創作というものに真正面からぶつかり、個が集団のためとなり、集団が個のためとなった卒業制作だったと思います。

蔭山 あんな(『解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話』脚色・演出)

担当教員によるコメント

2020年2月から世界的に感染拡大をした新型コロナウイルスは、今現在でも私たちを翻弄し続けており、上演芸術は崖っぷちに追い込まれる中、第6期生はその状況下で学生生活を送ってきました。しかしながらその中で、ひとり一人が自分たちでできることを見出し、自分たちの役割と責任を自覚しながら、卒業公演という目標に向かって努力を重ね、無事に卒業公演の幕を開けました。
舞台美術ゼミ第6期生はひとり一人が個性的・独創的であり、この卒業公演においては金子梓美のデザインを全員が主体性をもって、大道具製作・小道具製作・舞台監督・演出部を担い、照明・衣裳・音響各セクション、演出家・俳優陣と連携して、大きな目標に向かって邁進してきました。そしてこの到達点はゴールではなく、卒業後社会に飛び出していくスタート地点にようやくたどり着きました。

教授・金井 勇一郎


卒業制作演劇上演は学生主導での、作品選定〜演出と出演者達による芝居作り〜美術デザインの創作と云う集団での創作活動の過程を経る。又それらを統括し折衝するプロデュースの活動も重要になってくる。上演芸術とは手法の差異があれどもエンターテイメントであるべきで更にそのテーマは普遍性がなければならないと考える。これは固有の思いであり他者に押し付けようとは思わない。しかし演出もデザインもそれは創作者の「個」のものであり話し合いがあったとしてもそれは作品にとって「個」の領域である。ある程度創作が進んだ状態でブレインストーミングによる変更が要求される集団での創作活動と「個」の融合と云う難行を乗り越えていったアーティストの卵達に拍手を送りたい。

教授・成瀬 一裕


卒業制作は、学位(芸術学士)取得の最終課題。容易くクリアできるものではありません。企画立案・運営・創作・公演をやり遂げることが、卒業制作・演劇公演の課題なのですから。全身全霊で取り組む学生の姿は、大学という時空間の豊かさの象徴です。上演芸術の創作には、グループワークならではの醍醐味がありますが、それに至る過程には様々な困難があり、幾多の悩みの果てに、印象に残り続ける作品が産み落とされました。企画立案会議でも、忘れ難い場面が幾多もありました。日本、韓国、中国で育った若者たちによる会議です。異なる学校教育を受けてきたことに起因する摩擦を乗り越え相互理解に至る過程において、私は涙を禁じえないことがありました。人類史が困難に直面している今日。学生たちは、芸術は喜びと警鐘を人間に与えるものであることを証明する戯曲を選び取りました。

教授・加納 豊美


異なる作品の2本立て公演という形式は卒業制作演劇公演で初の試みでした。その2作品ともが学生創作ではなく、劇作家による既成の戯曲への取り組みとなりました。過去に執筆、上演された戯曲から現代性と当事者性を見つけ出し掛け合わせる作業は創作と同時に批評の力が必要であり、時間をかけて大いに学生は成長したと感じます。また2作品をつなげるイメージや言葉の創出も積極的に行い、結果として50名超の2チームの学生をひとつのチームへと導いた運営も重要な達成でした。
2本立てによる物理的な制約は劇場美術コースの学生にとって乗り越えるべき大きな課題となりました。準備などによる時間の制約、同じ稽古場や舞台を共有するという空間の制約、これらを見事にクリアし質の高い上演を行い、また安全に撤収を完了したことは見事な達成であったと言えます。

准教授・柴 幸男

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