卒業制作優秀作品集2022
絵画学科版画専攻

佐藤 翼

(上段左から)傲慢 強欲 憤怒 (下段左から)嫉妬 色欲 貧食 怠惰

技法・素材:油性木版、青墨
サイズ:H1800×W915mm(7点)

現代において、言語化できない様々な負の感情があると私は考える。私はそのような怒り、悲しみ、後ろめたさ等の負の感情を木版に彫り刻む事で心の奥に押し込まれ、膨張する感情を封印する。人間生活を送る上で、常に負の感情と対峙するのは困難であるが、時にそのような負の感情を直視し向き合うことで、新たな発見と出会いがあるのである。版を介すことで客観性が生まれ、化身化、具現化された負の感情と今一度対峙することができるのである。

担当教員によるコメント

彫刻刀で彫られた、ガザガザとした彫り跡が印象的な作品である。化身化された人物達は、物言いたげに鑑賞者を見据えて迫ってくる。
佐藤翼は、圧倒的なエネルギーでこの人物たちを生み出した。それは、人間のもつ様々な負の感情と対峙するためである。社会が複雑化し、不安に陥る事象が相次ぐ中で、人は負の感情から逃れることができない。16世紀の版画家、ハンス・ブルクマイヤーもこのテーマで作品を制作しているが、人間がこの世に誕生してからの普遍的なテーマともいえよう。
作者は、版をひたすら彫るという手仕事を施し、外在的に刻印とも言える「版」を介入させることで、何かを浄化させようとしたのではないだろうか。
そして、その痕跡から生まれた人物達は、観る者を激しくゆさぶり引きつけてやまない。

教授・古谷 博子

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