卒業制作優秀作品集2014
芸術学科
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- 葉計 成勇
デザインの三種〈攻撃/福祉/芸術〉
―R.B.フラーとジョン・R・ボイドの思想から―
本稿では、デザインは何種類に分けられるのか、を考察する。その際、R. B. フラーとジョン・R・ボイドを参照した。フラーは建築家である。フラーは、戦争用品を殺戮器、生活用品を生活器とし、生活器だけを産出するなら、人類全体が高水準の生活を営めるとした。他方ボイドは、戦闘飛行機教官を経て、戦闘機開発や、軍隊の指針制定に協力した。ボイドは晩年、人間の行動と思考からパターンを見出し、それにより勝利に近づく方法を提唱した。二人の比較をする先行研究はまだない。本稿の結論では、デザインは三種類であり、〈攻撃/福祉/芸術〉に分けられる。
担当教員によるコメント
人間の生み出すデザインを、〈攻撃/福祉/芸術〉の三種に区分しR.B.フラーとジョン・R・ボイドの思想から捉え直すという独自の論点を掲げた。すなわち近現代の戦争の実戦における効率主義的な構想を攻撃のデザインとして批判的に解析し、その対極にある、人間の福祉に奉仕するデザインを詳しく解き明かした上で、これら近現代の「有用性におけるデザイン」を超えた磁場に、「芸術としてのデザイン」が存在することを指摘した。「芸術的デザイン」とは、有限の存在たる人間が、善悪の彼岸を抱えながら、その思考と想像力によって「自由」の領野を具現化し創造しつづける構想・意匠の総体であることを示した優れた論考である。
教授・鶴岡 真弓