2020年度 新入生の皆さまへ
学科長メッセージ

新入生の皆さまへ、各学科長からのメッセージを掲載いたします。

絵画学科日本画専攻 岡村 桂三郎 OKAMURA Keizaburo

絵画学科日本画専攻

岡村 桂三郎

OKAMURA Keizaburo

入学、おめでとうございます。
 この春、大変な時期の入学となってしまいました。しかし、これは得難い時に、芸術の世界に入ってきたということなのかも知れません。
 というのは、この先の世界はどのように変化するのか、私にも分かりませんが、少なくとも私たちの心は今、以前とは何かが変わってしまったのではないか、そんな気がしてならないのです。もしかしたら、世界が変化してしまうのは、まさにこのタイミングなのかも、と思うのです。
 この地点に立ち、皆さんのフレッシュな感性によって世界を眺め、今を感じとって下さい。そして、皆さんの心の中を観察してみて下さい。当事者として、どのような世界に生きているのか、その上で、それぞれ何をイメージしようとするのか。
 多摩美は日本画を学ぶ大学として、おそらく最も自由な気風に満ちた場所です。また、日本画そのものが、思っている以上に多様で豊かなものであり、可能性に満ちていることに、恐らく気が付くはずです。
 皆さん一人一人は、私たち一人一人が真剣に審査した結果の、かけがえのない合格者です。どうぞ胸を張って入学してきてください。このタイミングから一生をかけて、表現者としてどのように成長していくのか、楽しみです。

絵画学科油画専攻 木嶋 正吾 KIJIMA Shogo

絵画学科油画専攻

木嶋 正吾

KIJIMA Shogo

新入生の皆さん、入学おめでとうございます。皆さんを心から歓迎します。新型コロナウイルス感染拡大により、入学式が中止となり授業も延期となっています。大変残念ですが、大学に登校することなく自宅で待機して、来るべき日に備えてください。自宅でできる制作や読書、軽い運動や手洗いをしっかり行い、不要不急の外出を自粛して、規則正しい生活を心がけ健康に留意してください。
 さて、これから皆さんが通うことになる多摩美術大学絵画学科油画専攻は、国内屈指の実績と伝統を兼ね備え、国際的にも高く評価されていて、卒業生は国内外で活躍しています。我々教員は、さらに充実した教育を提供できるよう、カリキュラム改革をすすめています。4年後、皆さんが社会で活躍できる人になるためには、在学中に充実した学生生活を送り、人間的にも成長することが必要となります。これから何より皆さんの積極的な授業への参加が必要不可欠となりますが、今しばらく自宅での制作を続けてください。皆さんの節度ある行動で、きっと困難を克服できます。

絵画学科版画専攻 古谷 博子 FURUYA Hiroko

絵画学科版画専攻

古谷 博子

FURUYA Hiroko

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
 新しく始まる大学生活に心躍らせ、受講を待ち望んでいたと思いますが、新型コロナウイルスの感染拡大により、今までに経験のない事態のもとでのスタートを余儀なくされました。さぞかし不安を感じて過ごされていることと思います。
 皆さんがこれから学んでいく版画には、変化に対応していく柔軟さと多様性があります。版画はアートとデザインを横断し、その時代、地域の社会に関わる多種多様なメディア表現であるからです。それゆえ社会に広く発信する力を持って発展してきました。
 この情報が錯綜し不自由で制約のある状況の中、何をすべきか、何が出来るかをゆっくりと考えてほしいと思います。図らずも、私たちはしっかりと足元を見る機会を与えられたからこそ見えてくる何かがあるはずです。どうかこの困難をプラスのエネルギーに昇華してください。
 思考・行動から得られた知識の蓄積、創造する力は、皆さんがそれまで気づかなかった自分自身の潜在的な可能性に出会うきっかけとなります。そしてそれは表現者としての大事な経験となり、独自の表現世界への導きとなるでしょう。
 版画専攻教員スタッフ一同、皆さんにお会いできる日を楽しみにしています。

彫刻学科 高嶺 格 TAKAMINE Tadasu

彫刻学科

高嶺 格

TAKAMINE Tadasu

新入生がどう過ごしているかを考えている。もともと実家にいる者もいれば、実家に戻った者もいる。アパートで一人過ごしている者、入国できない者。置かれた境遇はそれぞれだが、人とフィジカルに関われないのは世界中同じだ。かく言う私も八王子に越してきたばかりで、慣れない彫刻の研究室で、ここにいたはずの新入生を想像している。新入生がバラバラに過ごしている新学期などはじめてだ。みんなどう過ごしているのだろう。(元気かな)?
 多摩美の彫刻は、全国でも屈指の設備を誇る。工房に所狭しと置かれた使い込まれた道具。いまは使われずにいるそれらの道具を見ながら思う。
 もともとモノと格闘する彫刻というフィールドにおいて、オンラインなどくそっくらえだ!今はその悔しさを胸に溜め込み、来たるべき時に備えて想像力をたくわえる時なのだ!でももちろん、オンラインでできることはやりますよ。もともときらいじゃないし。もともとカリキュラムにはなかったオンライン授業だけれども、こんな事態でもなければ彫刻でオンラインなんて永遠にあり得なかった。イレギュラーな1年になるけれども、こういうときにこそ新しい表現が現れるんじゃないか?それは世界同時に起こるはずで、彫刻にとっても概念が大きく変革される時かもしれないと、君たちが卒業する4年後が早くも楽しみになってきました。
 入学おめでとう!

工芸学科 小林 光男 KOBAYASHI Mitsuo

工芸学科

小林 光男

KOBAYASHI Mitsuo

新入生の皆さん、工芸学科へようこそ。・・・とはいえ、現在も新型コロナウイルスの影響で始まりが先延びになっていますね。始まりは5月の予定ですが、皆さん身体の様子はいかがですか。人が活動する根っこになるのは、やはり心身共に健やかであることです。いろいろ制限を受ける今、皆さんの新しい居場所への熱き思いもしばらくはそれぞれの心に留めることになると思いますが、どうぞその思いを大切に持ち続けてください。そして授業開始が先延びの今の時期は、一日一度は大学ホームページ、工芸学科のオリジナルサイトなどを見るようにしてください。大学の新情報や入学後の学生生活、工芸学科での授業や制作活動の内容、設備の様子などを把握していけると思います。
 また授業開始までは、無理ない各人の動きの中で「つくる」ことに対して何かしら積極的に考え動いてもらいたいと思っています。工芸学科教職員スタッフ一同は、皆さんと共に、元気に「いい顔」で会えることを楽しみにしています。元気に「いい顔」で会いましょう。

グラフィックデザイン学科 大貫 卓也 ONUKI Takuya

グラフィックデザイン学科

大貫 卓也

ONUKI Takuya

君たちはコロナ終息後の社会がどうなると想像していますか?ネット上ではネガティブな予測がとびかっています。人々の価値観がガラっと変わるであろうこのタイミングこそ、 まったく新しいアイデアや表現や行動が求められる時でもあるのです。
 企業だって、みなさんの生活だって、過去のルールが通用しない、まさに世界中が大イノベーションをむかえる、進化の時代がやってきます。多くの人が今まで見失ってきたものが再認識されたり、よりよい社会になるチャンスであると捉えることもできるはずです。そうやって、ポジティブに考えてみませんか。
 想像しましょう。これから社会で何が起こるのか。何が人の心を動かすのか。次世代のアイデアを連想ゲームのように考えるだけでワクワクしませんか。
 もちろん、楽観的にものごとを見ているわけではありません。多くの解決すべき問題が山積みであることは変わらない現実です。それらをアイデア、アート、デザインというクリエイションの力によって解決しながら、まだ見たこともない新しい時代を築いていくのは君たちです。そのために、多摩美術大学での生活は、しっかりと基礎体力をつける時間です。 自分とまわりの人間を守ることを優先し、今できることを一緒に精一杯やりましょう。
 様々な問題を乗り越えながらも、次の時代は必ずやってくる。

生産デザイン学科プロダクトデザイン専攻 武正 秀治 TAKEMASA Hideji

生産デザイン学科プロダクトデザイン専攻

武正 秀治

TAKEMASA Hideji

ご入学おめでとうございます。令和の時代を迎え、最初の新入生として皆さんをお迎えすることになりました。プロダクトデザインの教職員を代表して、心よりお祝いを申し上げます。ご家族の方々、関係する皆さま、おめでとうございます。
 現下の世界は新型コロナウイルス感染症拡大との戦いの真っ只中です。考えうる様々な対策のもと、ご挨拶もこのような形式で行うことになりました。
 さて、皆さんが学ぶプロダクトデザインについて少しお話ししましょう。プロダクトデザインとは、暮らしを豊かにする新たなツールや発想を創造するための計画や設計です。社会を脅かす感染症問題の中で、厳しい大学生活のスタートではありますが、健康に留意しながら、豊かで幸せな暮らしを実現するプロダクトデザインについて、4年間一緒に学んでいきましょう。皆さんご入学おめでとうございます。

生産デザイン学科テキスタイルデザイン専攻 髙橋 正 TAKAHASHI Tadashi

生産デザイン学科テキスタイルデザイン専攻

髙橋 正

TAKAHASHI Tadashi

ご入学おめでとうございます。全ての新入生の皆さんにお祝いを申し上げます。本来であれば希望に満ちた春なのですが、さぞ不安な時期を過ごされていると思います。COVID-19 感染は世界中で猛威を振るっており、自宅待機を余儀なくされています。
 しかし、あなた方は孤立していません。現代はネット環境の充実に伴い誰かと結ばれているはずです。テキスタイル研究室でも皆さんと繋がり、安心して修学できるように鋭意検討を重ね、新学期に向け調整を進めて参りました。この不条理で流動的な事態を前に、落ち着いて有意義に過ごしていただきたいとの思いから、近日中に皆さんへ学内授業開始までの過ごし方や目標の取り組みについて具体的な連絡を致します。
 そして授業開始の暁には、そのホームワーク講評会開催を楽しみにしていて下さい。また、新学期には新たな友人たちとの出会いやテキスタイル専攻ならではの基礎実習も待っています。互いに健康で、お会い出来ることを研究室一同は心から願っております。

環境デザイン学科 松澤 穣 MATSUZAWA Minoru

環境デザイン学科

松澤 穣

MATSUZAWA Minoru

入学、進級 おめでとうございます。
 本来ならば新学期が始まっているであろうこの時期、新入生や在校生の皆さんは、さぞかし不安とそして焦りを感じていることと察します。
 「鉄は熱いうちに打て」とはまさに君たちのこと。言い換えるならば、乾いたスポンジが水を吸い上げるかの如く、知識を吸収することができる今、一刻一秒無駄にしたくはないと、私たちもとてもやるせない思いでいます。
 環境デザイン学科のアイデンティティはまさに、時空間を共有することを最重要視したカリキュラム。例えば新入生の第一課題の「段ボールで身体を支える」は、見えない重力への学び。悔しいかな、今それができずにいます。しかし悲観ばかりもしていられません。その時空間を共有するためには、それを支える確かな「考え」が必要です。
 指先であらゆる情報が得られる時代、その情報の濁流に流されぬよう少々踏ん張って、立ち止まってみてください。自らの足元からその濁流の川面、つまりインターネットも見渡す姿勢が身につけば、スクロールで目の前を通り過ぎていくのとは大きく異なる知識が得られ、その「考え」の肉付けになると思います。
 この惨禍が一刻も早く収束し、皆さんに会えることを願っています。

情報デザイン学科 原田 大三郎 HARADA Daizaburo

情報デザイン学科

原田 大三郎

HARADA Daizaburo

入学おめでとう!入学式もなく不安を感じていることでしょう。
 皆さんに今、出来るのはその場に留まって“想像し考える”ことです。以下、課題です。
 「グローバルな世界で起こった、パンデミックの中を生き抜くクリエイティブな方法を提案しなさい。」
美大生ならではの解答を自宅で熟考するように。どんなに小さなことでも構わないので“想像し考える”。今回はその解答が生かされることは間に合わないかもしれませんが、いずれ生きて来る。本当はそういう時代が来なければいいのですが・・・
 多摩美術大学へようこそ。入学おめでとう!

芸術学科 小川 敦生 OGAWA Atsuo

芸術学科

小川 敦生

OGAWA Atsuo

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。本来なら皆さんのはつらつとした表情を見ながらお話しするべきところですが、書面によるご挨拶となることをお許しください。
 芸術学科は実技を基本とした本学の中で、極めて特殊な立ち位置にあります。各芸術・デザイン分野への「ことば」によるアプローチを基本としているからです。
 人間という動物は、「ことば」を持つことによって深い思考ができるようになりました。絵を描いたり音楽を演奏したりするときにも、気づかないうちに複雑な思考が反映している。それゆえ、芸術においても「ことば」は本当に大切なものなのです。
 現況下では対面して「ことば」を交わすことができないもどかしさがあります。しかし、まずは美術史書や評論記事、文芸などの文章を媒介にした研究をはじめ、時にはネットなどを介したコミュニケーションによって、皆さんと教員の間、また皆さん同士の中で「ことば」を交わす。その中で思考を深めていきましょう。
 そして教員一同、皆さんとそう遠くない時期に芸術学棟で実際にお会いして「ことば」のやりとりをするのを、とても楽しみにしています。

統合デザイン学科 深澤 直人 FUKASAWA Naoto

統合デザイン学科

深澤 直人

FUKASAWA Naoto

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。 新型コロナウイルスの蔓延により世界中が生存の危機に脅かされる中、今まで希望を抱いて勉強に励んできた皆さんの心中を思うと心が痛みます。でも健康で元気な生活を心がけてください。デザインは一生が生活の勉強です。人の生活を思い、誠実に生きることこそが最高のデザインであると信じます。皆さんの創造性はどのような状況においても発揮できるものだと思います。今は自分に身近な生活の中から何かを良くしていってください。
 今起こっているこの厳しい事態への教訓から人々は生きることへのアプローチを変えるようになると思います。経済発展とビジネス創出に向かってまっしぐらに突き進んできた人々は、これからは小さくても幸せな生活のビジョンを思い描くようになるでしょう。健康や安心安全、家族、環境、教育、そして芸術に目を向けるようになるでしょう。私たちデザイナーにとっては今が良いタイミングのような気がします。幸せに生きるためのビションを描くことが人々の助けになるのです。
 幸せな生活に焦点を当て、デザインで真に質のいい生活を創造していきましょう。

演劇舞踊デザイン学科 金井 勇一郎 KANAI Yuichiro

演劇舞踊デザイン学科

金井 勇一郎

KANAI Yuichiro

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。またご家族の皆さまにも心よりお祝いを申し上げます。演劇舞踊デザイン学科を代表いたしまして、皆さんが4年間この学科で学ばれることを歓迎いたします。
 新型コロナウイルスの感染拡大防止対策のため、入学式が中止となり、また授業開始も5月11日(月)と大幅にずれ込みましたが、新入生をはじめ在校生の皆さんの安全を確保するための措置ですので、ご理解をいただければと思います。
 当学科はプロと同じようなプロセスに沿って、総合芸術を学び、人間力を養い、将来芸術文化を担う俳優・ダンサー、舞台美術・照明・衣裳、映像美術デザイナー、それに関わる技術者となるよう教育していきます。また芸術文化を論理的に理解、展開できるように専門講義も充実しております。本年度は多少変則的なカリキュラムになると思いますが、しっかりと1年次に基礎を学んでいただきたいと思います。
 「いいかい、未来ってのは、明るく進むだけじゃねぇ、半分は暗闇に向かって行くんだよ」(横内謙介・脚本『げんない』より)という私の好きな芝居のセリフがあります。今、世界はまさしくこの状況ですが、この暗闇に希望の灯りを、みんなで灯していきましょう。皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。

大学院美術研究科 松浦 弘明 MATSUURA Hiroaki

大学院美術研究科

松浦 弘明

MATSUURA Hiroaki

たった一種類のウイルスが知らず知らずのうちに世界中に拡散し、多くの人の命を奪っています。かつて経験したことがない現在の状況に、誰もが大きな不安と恐怖を感じています。
 多摩美術大学では、人と人とのつながりを何よりも重んじてきました。教員は単に技術や知識の伝達だけではなく、学生が求めていることにどのように応えることができるのかを、一人一人に対して真摯に取り組んできたのです。だからこそ、人の密な接触が禁じられている今、教員は大きな戸惑いを感じています。オンラインではなかなか実現し難い対面での暖かい関係こそが本学の特徴だと自負してきたからです。この困難な状況下にあっても、平常時となるべく変わらぬ関係性を築きたい。それが教員たちの願いであり、目下のところ最大の課題なのです。
 その一方で、視点を変えれば、大きな災害は創造の源ともなりえます。かつてフィレンツェでルネサンス美術が花開いたのは、ペストがヨーロッパ中を恐怖のどん底に陥れた後だったことを思い出しましょう。普段とは全く異なる現状を見渡すと、いつもは見過ごしてしまっていた「何か」に気づくはずです。それをひとつのカタチにして発信すれば、同じ経験をしている世界中の人々の心に訴えることができるかもしれません。
 今こそ、皆さんの創造力を最大限に発揮して、真の「現在美術」を生み出していってください。

関連情報

掲載日:2020年5月1日