始まりは絵画を楽しく身近なものしたいという、ごく自然な思いからだったようだ。思考錯誤の末に見つけたのが、この小熊杏奈の写真館である。撮影用に描かれた背景の花模様は金と銀の二通りあり、どちらもその前にはいかにもレトロな椅子が置かれている。ネット上の意見だが「人は生まれつき金タイプと銀タイプに分かれていて、必ずどちらかとの相性が良く、映える」のだという。訪れた人は当然のように自分が映えるタイプの背景の前に座り、そして撮影される。その瞬間、作品は完成する。そんな作品が次々生まれ、それを集めた写真集がまた別の作品となる。そして例えば母の日用、集合写真用と背景の制作は止まることなく、結果として作品の展開がますます広がっていくことになるのだろう。

教授・野田 裕示